北朝鮮の人工衛星発射
北朝鮮の核実験を受けた国連安全保障理事会の決議(2006年)は、「弾道ミサイルに関するすべての活動の停止」を求めており、人工衛星といえども、弾道ミサイルと同じ機能を有することは常識であり、決議に違反することは明白です。
また、上空を通過される日本の立場から言えば、
「正常に飛行すれば、領空(「領空は高度10万m以下」とするのが、領空の定義の主流?)よりも上を通過する模様(1998年の実績から推定)であり国際法上問題ない」と言えなくはありませんが、
失敗して予定外の場所に墜落する可能性も少なくありません。(2006年のテポドン2の場合、発射直後に墜落したはず)
金正日体制の無謀さを表しています。
動機
(従来のブッシュ政権と異なる方針が見られないことから)オバマ政権への期待が外れたことに関連しているように思えます。
このほか、「ミサイル技術輸出のための宣伝を狙っているとも、金正日体制の威信のためとも言われています。オバマ氏の大統領当選時点では、その2日後に発表しており「2000年は結果の確定から5日後、2004年は投開票から7日後」(asahi.com 2008/11/8)に比べ短期間であり、この時点では金正日がオバマ大統領に期待を寄せていたと言えそうです。
しかし、来日したクリントン国務長官が拉致被害者家族会のメンバーと面会した際に「北朝鮮は残酷な国で理解できない状況だ。」と語る(2月17日)など、北朝鮮に対して良い印象を持っていないことは明白です。
安全保障と関係なし
反共で定評のある読売新聞も含め、新聞紙上、「日本への軍事的脅威」との認識を示していないのが意外でもありますが、これが妥当な判断のようです。
毎日新聞は「米国の注意を引き付けて交渉のテーブルに誘い出す狙い(毎日新聞2009/2/25)」「アメリカに核軍縮交渉を迫るため(毎日新聞2009/3/24)」など、アメリカとの交渉によって「恐怖・貧困から脱出」することを意図していると見ています。
「反共」で定評のある読売新聞も『・・・・4月4~8日に・・・・最高人民会議(国会に相当)第12期の第1回会議が有る。・・・金正日国防委員長の「3期目」が正式にスタートする・・・・・・・・・・実質的にはミサイル発射となる「人工衛星打ち上げ」成功を会議開幕に合わせて劇的に演出し、「祝砲」にする思惑のようだ。・・
・・・核・ミサイル問題ともに米国との交渉を目指す北朝鮮としては、「あと一押し」で直接交渉にこぎ着けると踏んでいるわけだ。・・・・・』(2009/3/13)と、日本の安全保障上の問題ととらえていません。
発射をやめさせる対策
名案は有りません。
撃墜について
少なくとも、日本領土内へ「本体やブースター」が墜落する場合に(SM3やPAC3で)撃墜するのであれば、朝鮮も文句のつけようがないはずです。
しかし、政府はこの件を利用して政権浮揚につなげたい思惑があるとも言われており、踊らされない冷静さも必要。
今後、目指すべき方向
日米と北朝鮮との関係は、「94年10月の北朝鮮の核開発凍結をうたった枠組み合意」や「日朝平壌宣言」が、その目指すべき方向を示していると思います。
「枠組み合意」が破たんしたことについては、北朝鮮よりアメリカ側に大きい責任があり、北朝鮮だけを悪者扱いすることなく謙虚に協議が進められるべきだと思います。
また、最近(3月9日から20日)実施された米韓合同軍事演習の期間は昨年の2倍となっており、米原子力空母が北朝鮮の沖合で戦闘機の発着訓練を行うなど「人工衛星発射への牽制」のつもりかもしれませんが、「金融封鎖と核実験」の例も有り、逆効果だと思います。
「北朝鮮が困った独裁国家」であることは確かですが、アメリカの動きに問題のあることも少なくなく、冷静に見てゆく必要があると思います。
迎撃ミサイルシステムの整備(いずれ、対北朝鮮にとどまらず中国のミサイル迎撃へとエスカレートする可能性大)に注力するのでなく、(それが要らなくなるような)上記した緊張緩和の方向へ努力すべきだと思います。